雨音
すがる藁もない
掴む雲もない
あるのは
飢えと寒さ
奪われてゆく熱
見下す空
見上げる地
静かな部屋で
雨音を聞きたい
洗顔
死んだ魚の目の奥に
まだ光があるのなら
泳ぐしかないだろう
まな板の上で
公衆便所の鏡を睨む
まだ
洗うべき顔がある
出直すための
灰色のため息
横殴りの雨に打たれ
抗えない夜に身を投げる
噛み締める歯がゆさもないまま
午前三時の街角で
灰色のため息を吐く
始発電車が動き出す
ガード下の公園で
うつろなまま
睨む空を探している
ゴミ
棄てられる前に
捨てちまえ
脂っこいプライドなど
ゴミはゴミになるために
生まれてきたわけじゃない
ゴールが見えるまで
ゴールテープを
身体いっぱいで
駆け抜けた時
すでに一歩
踏み出している
スタートラインを
道はなくとも
踏み出すしかない
二歩目を
そして三歩目を
次のゴールが見えるまで
彼方
強大な渦が
襲いかかってくる
必死に抗おうと
もがくほどに
呑み込まれてゆく
熱情の彼方
愛は憎しみに変わる
情熱の彼方
憎しみは愛に変わる
夕陽沈めど夜は来ず
朝陽昇れど朝は来ず
私の彼方で
烏が鳴いた