シンシンと
冷え込んだ午前3時
パラパラと雨がふりはじめた

街灯のあたらない
交差点の真ん中で
一人の男が崩れるように
倒れた

立ち上がろとするが
半歩前へ出ては
また突っ伏した

酔っぱらいかと
通りすぎようとしたが
何となく気になって
声をかける

『大丈夫ですか?』
『あぁ大丈夫』

酒臭さはない

『ケガしてるんですか?』
『あぁ大丈夫』

『家近くですか送りますよ』
『いや大丈夫』

『いやでも立てないじゃないですか』
『いや本当に大丈夫』

あまりの頑なさに
後ろ髪を引かれながらも
その場を後にした

どうみても
大丈夫ではないのに大丈夫

いつもの帰り道
交番の前
指名手配写真

ふぅ
そこに彼の顔はなかった

雨足が激しさを増す

私はお巡りさんと一緒に
彼の元へ走った
せめて傘を